2013年2月16日〜29日
2月16日  キャンベル 〔執事・未出〕

 主人は携帯電話をとり、家令に連絡しました。

「譲渡は取り消しだ」

 しかし、すでに手続きは済んでいます。家令は無理難題に往生したようですが、

「当事者同士で解決してくだされば、こちらは取り消しに応じます」

 主人は今度、ポール・テイラーの病室に乗り込みました。

「譲渡は撤回する。四の五のいうなら、きみのクラウドナイン社相手に訴訟をおこす。水増し会計の件でだ! 国税局にもタレこむ!」


2月17日 キャンベル 〔執事・未出〕

 結局、譲渡はなかったことになり、ご主人様はコスタの所有権を取り戻しました。

 テイラー氏はゴネましたが、慰謝料としてご主人様が2000万ドル提示するとあっけなく引き下がりました。

 示談が成立したため、コスタの傷害は罰金で許されることになりました。

「ずいぶんお金使ったね」

 コスタはひとごとのように呆れていました。

「きみにはその価値がある」

 主人の声は少し裏返っています。

「うちへ、来てくれるかい」

 コスタはまぶしそうにご主人様を見ました。

「おれ、風呂には入らないよ」


2月18日 キャンベル 〔執事・未出〕

 二階から、バスローブだけひっかけたコスタが奇声をあげて駆け下りてきました。

「ミストサウナ、最高―!」

 ペペがニヤリと笑い、

「だろう。おめえみたいな不潔ワン公なんざ朝飯前よ」

「すげえ気に入った!」

 ありがとう、とペペの頭にキスします。ペペは肩をすくめました。
 主人は新聞をひろげつつ、

「ぼくはサウナは息苦しいけどねえ」

「じゃ、いっしょに入ろうか」

 コスタがはしゃぎます。

「エロいよ。ミストサウナ。蒸気と汗と男の熱い肌」

 わたしはふたりをたしなめました。

「お茶の時間ですよ」


2月19日 アルフォンソ 〔わんわんクエスト〕

 バレンタインの後、人恋しいので、毎日あちこちのベッドを渡り歩いてます。
 今日は皆のベッドリポートしましょう! 
 まずはロビン。

 ロビンは大変体温が高いのです。冬は部屋にヒーターを入れずに寝ても、あったかです。

 が、暑くなって、彼よくは毛布を蹴飛ばします。寝相も悪いです。気づくとはじっこで丸まっているので、時々、毛布をかけなおしてやらなければなりません。

 でも、一度、寒いなと思いながら寝てたら、ロビンが毛布をかけてくれたこともあったんですよ。


2月20日 アルフォンソ 〔わんわんクエスト〕

  
 エリックも最初はイヤがりましたが、最近は夜行くと「どうぞ」と入れてくれるようになりました。

 彼の特徴は、すぐ寝入り、すぐパッと目が覚めることです。
 寝起きが異様によろしいです。夜中でも何か物音がした時、かならず彼は目を覚ましています。ニンジャが降ってきたらすぐ戦えるでしょう。

 眠りが浅いのではなく、短くてもグッと眠れるそうです。

 紅茶の時間はよくうたた寝しています。5分ぐらい退屈だと寝ちゃうんだそうです。


2月21日 アルフォンソ 〔わんわんクエスト〕

 本日はミハイルのベッドレポートです。
 
 ミハイルもエリックと同じで、物音にすぐ反応する寝方をします。寝返りうっても目を覚ますので、最初は気を使いました。

 でも、たまに無防備に寝ているのがわかる時があります。
 
 ミハイルは横向きに腕を組むようにして寝ることが多いのですが、途中でバランスをとるためにこちら向きになるんです。

 その時に無意識にわたしの腕を抱えこんだりする。ベアでも抱くみたいに。
 かわいくてたまらんです。


2月22日 アルフォンソ 〔わんわんクエスト〕

 本日はフィルのベッド風景をお届けします。

 フィルは夜更かしです。枕を抱えていくと、たいがい何か読んでいます。

 30分ほど邪魔しつづけ、ようやくベッドに入ってくれます。このごろはすぐベッドに入ってくれるようになりましたが、こっちが寝入ると、本人はまた抜け出て本を読んでいたりします。マイペースです。

 フィルはあんまり動かず、寝息も静かです。でも、たまに寝言を言います。

「罫線」と言われた日には、何の夢見ているのか考えこんでしまいました。
 そして、寝起きは悪いです。


2月23日 アルフォンソ 〔わんわんクエスト〕

 今日はキースのベッド風景。

 といってもキースのベッドにはあまり行かないので、庭テントの雑魚寝の時のレポート。

 この男、なかなか寝ません。キャンプ大好き。いつまでもはしゃいで、寝つけないでいるようです。

「キース、寝ろ」と皆に言われ、しばらくしてまたゴソゴソしだすという繰り返し。
 夜明けになってようやく静かになりました。
 
 翌朝、寝不足の男たちが、炭で彼の顔にメガネや髭を書きましたが、遊び疲れた仔犬みたいに眠りこんでいましたよ。


2月24日 ロビン 〔調教ゲーム〕

 今日は、わたくしロビンが、アルフォンソくんのベッドレポートをします。

 アルフォンソくんの寝相の特徴は「笑い」です。

 この男、寝ながら時々、笑うのです。
 「うふふ」とか、「ぷっ」とか、たまに「ハッハッハ!」と笑い出して、隣にいる人間をドキっとさせます。笑い声で当人も起きるぐらいです。

 何も言わず、すやすや寝ている時も顔が笑っています。
 かわいいです。

 フィルでさえ、「目が覚めた時、あの機嫌のいい寝顔が前にあると、なんか楽しくなるな」といいます。


2月25日 ルイス 〔ラインハルト〕

アキラにまたマンガが届きました。

「やったー! そして、明日は休み! わっほーい!」

 ダンボールのまわりで踊り跳ねています。

 明日の休みはおれも半休です。たまにはいっしょにヴィラの外に出ようかと誘うつもりでしたが、もう無理です。

「明日はマンガ未亡人だよ」

 ラインハルトにぼやいたら、

「戦え。おれだったら、マンガの上でごろごろ転がっちゃうね。読ませない」

(……あんたならね)

 おれがやっても、たぶん上の本をどける感覚でマンガを引っ張り出されるだけです。


2月26日 ルイス 〔ラインハルト〕

 今日はひとりで買い物をして、カフェでだらだら過ごしました。ペーパーバックのミステリを読んでいたのですが、あまりのめり込めません。

(おれってつまんないやつだなあ)

 友達にも会わず、もの憂い午後になりました。

 帰ると、アキラはすでにキッチンにいました。

「読んだの? マンガ」

「ハイ。おかげさまで」

 彼はいきなり背中から抱きしめました。

「放っておいてごめんよ。生き返った。ありがとう」

 その言葉で気持ちがやわらぎました。
 少しさびしかったけど、わかってくれてるなら、いいんです。


2月27日 アンディ 〔フィルゲーム〕

 今日はサー・コンラッドが帰ってくる。

 なぜだかうれしくてたまらない。なぜだか、髪をカットしにいってしまう。なぜだか、香水も振ってしまう。

 ビセンテが顔をしかめる。

「ジル、アンディにオレンジジュースをぶっかけたか」

「言ってやるな。せいいっぱいのおめかしなんだ」

 なんでだろう。なんでそわそわするんだろう。早く会いたい。なにか話したい話があるわけじゃないけれど、なにか言いたい。抱きつきたい。

 ふしぎだな。相手は男なのに、なんでこんなにウキウキするのかな。


2月28日 ジル 〔不貞〕

 4ヶ月ぶりに旦那が帰ってきた。

 アンディがよろこび狂い、本物のワン公みたいにまとわりついている。ビセンテすらエクササイズの時間になっても部屋に戻らない。

 旦那がいると家が華やかになる。アンディもビセンテも通電したみたいに元気だ。電気さえいつもより明るい。

 ビセンテなぞ、自分の体以外になんの関心もないような男だが、やはり退屈していたのだろう。今日はよく笑う。アンディも。

 旦那が帰ってよかった。別に連中の気分などかまいやしないが、やっぱりホッとする。


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